かぷら

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関東に行ったら波を彫るな
安房の名工と謳われた 「波の伊八」

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波と龍  文化5年(1808)作/ 智蔵寺/南房総市山名 今にも飛び出してきそうな迫力と欄間からはみ出す大胆な構図。初代・伊八の壮年期の力作。 寛政3年(1791)頃から竜の作風に変化が生じる。年代別に見比べてみるのもおすすめ

 躍動感のある波の彫刻を得意としたことから「波の伊八」と呼ばれ、「関東に行ったら波を彫るな」と言わしめた稀代の宮彫師・武志伊八(武志伊八郎信由)。江戸時代半ば、宝暦元年(1751年)に、現在の鴨川市打墨に生まれ、安房・上総を中心に、相模や江戸など広い範囲の神社仏閣に優れた欄間や向拝などを遺している。職人としての技もさることながら、その独自の才能には芸術家としての作家性を秘めていた。5代目伊八までおよそ200年にわたり受け継がれた。
 初代の作は、浮世絵で有名な葛飾北斎の「富獄三十六景」神奈川沖浪裏に大きな影響を与えたと言われており、北斎の作風はゴッホをはじめとするヨーロッパの多くの芸術家の作品に取り入れられるほど、衝撃的であったと伝えられている。南房総を拠点に、森羅万象を彫り出した伊八。この地がもたらす自由さに身を置いていたからなのか、型にはまらない大胆な作風は、見るものを魅了する。また、地域に暮らす人々の願いや祈りを形にした、しなやかな柔軟性も持ち合わせていた。伊八が最も重視した点は何か。それは、見る人の視点からの距離や角度に対応した細工にある。薄い材を用いていながら、実際以上のボリューム感・立体感を感じさせるのは、伊八が遠近法的な表現を意識的に、そして巧みに使いこなしているからなのだろう。これは、文化の中心である江戸に匹敵する、あるいは江戸を凌駕する地方文化の一つの頂点と言えるかもしれない。

 

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七福神の図(舞う恵比寿、眠る大黒) 初代・伊八30代前半の作/鏡忍寺/鴨川市広場 三面の欄間。中心には愉快に舞う恵比寿。向かって左側。米俵の上にうとうとする大黒様の耳たぶを、毘沙門天が「もっと飲まんか!」と言わんばかりに耳を引っぱっている。初代・伊八のユーモアとサービスのセンスが伝わってくる

 

 

◎上総で見られる伊八作品

三柱神社 拝殿向拝龍(富津市竹岡)
岩田寺 力士(吽)(君津市大阪)
光明寺 力士(木更津市中央)
長楽寺 獅子(木更津市請西)
成就寺 獅子頭/象鼻頭 (木更津市富士見)
厳島神社 日の出に鶴(木更津市富士見)
木更津市有形文化財指定